はじめに:パンケーキの記憶とともに
原宿のとある路地裏に、私がカフェ「uzna omom(ウズナオムオム)」を開いたのは2005年のことでした。
あの頃、日本ではまだ「パンケーキ」が今ほど知られていなかった時代。けれど、わたしはふわふわでやさしい甘さの“温かいおやつ”に、大きな可能性を感じていました。
そこから20年。数えきれないほどのパンケーキを焼き、たくさんのお客さまに笑顔を届けることができました。
「パンケーキって美味しい」
「ここで過ごす時間が、わたしのリセットです」
そんな言葉をもらうたびに、この小さな空間が誰かの生活にそっと寄り添っていることを、誇らしく思います。
uzna omomのこれまで
uzna omomの始まりは、わずか数席の原宿の一軒家カフェでした。大通りから少し外れた場所にあったその立地が、まさに“hidden cafe Harajuku”という言葉にふさわしいものでした。
やがて、お客様に支えられて国内に3店舗を展開し(うち1店舗はコロナ禍で閉店)、海外では台湾・台北に最大6店舗まで広がりました。
原宿の“fluffy pancakes Tokyo”として注目を集め、外国人観光客に「わざわざ行きたいお店」として名前を挙げていただけるようにもなりました。
けれど、私たちが大切にしてきたのは、いつだって「一皿ごとの温度」と「居心地のいい時間」。
ブームの追い風ではなく、お客さまの顔を思い浮かべながら生地を流し、焼き上げる。その積み重ねが、uzna omomの今をつくっています。
ブームの終焉と、新しいスタート
パンケーキブームと呼ばれた時代がひと段落し、東京のカフェ事情も大きく変化しました。
トレンドは移り変わっていくもの——。でも、私は思うのです。
「やっぱり、パンケーキが好き」
心が温かくなるような、ふわふわの一皿。
一口食べたときに、少しだけ前向きになれるような甘さ。
それは時代や流行を超えて、人の記憶に残る特別な食べものだと信じています。
だからこそ、私はこの節目に「パンケーキの再定義」をすることに決めました。
リニューアルした“生地”のこと
20周年を機に、パンケーキ生地を一新しました。
「もっと身体にやさしく、でも、おいしさは妥協しない」
そんな想いでたどり着いたのは、“幸せの青い卵”とも呼ばれるアローカナが産む殻が青く、栄養価の高い濃く豊かな卵や、フランス産の発酵バターや、北海道産の小麦粉、など、選び抜かれた素材。
添加物や保存料を一切使わずに、もちっふわっとした食感に、香りが豊かな新しいレシピは、“原宿 パンケーキ”としての誇りをもう一度胸に抱かせてくれました。
また、グランドメニューには「グルテンフリーもちもち米粉のパンケーキ」もご用意し、“原宿 グルテンフリー”や“原宿 米粉パンケーキ”を探して来られる方にも、やさしく応えられるようになりました。
オーナーの小麦粉アレルギーと向き合う
実は、わたし自身が数年前に小麦粉アレルギーを発症しました。
パンケーキ屋として、小麦粉の香ばしさや、ふくらむ匂いがとても好きだったのに、それを食べられない——という現実。
香りに惹かれながらも遠ざけなければならないもどかしさ。
そんな葛藤を抱えてきたからこそ、「同じように“好き”をあきらめないでいられる場所を作りたい」と思うようになりました。
米粉を使っても、“ヘルシーだけどちゃんとおいしい”ものは作れる。
むしろ、グルテンフリーだからこそ生まれる軽やかさや繊細な食感もある。
だから今、わたしたちは小麦のパンケーキと、米粉のパンケーキという2本の軸で、未来を描こうとしています。
“好き”を、我慢しない
「甘いものが好き。でも、身体にも気をつけたい」
「グルテンを避けている。でも、味も妥協したくない」
「旅先でも、自分に合った食を選びたい」
そんな方々の、“選べる自由”の味方でありたいと願っています。
ココロもカラダも、整っていくような時間を。
fluffyな一皿を囲みながら、だれかと笑ったり、ひとりでほっとしたり。
uzna omomは、そのための空間でありつづけたいと思っています。
これからの uzna omom
今、わたしたちはリブランディングという節目を迎え、新しいスタートラインに立っています。
「fluffy pancakes Tokyo」
「gluten free pancakes Tokyo」
「hidden cafe Harajuku」
そんな言葉で検索されるような、“また行きたくなるカフェ”であるために。
これからも、素材にこだわり、空間を整え、対話を大切にしながら、心に残る一皿を届けてまいります。
いつか、“グルテンフリーでもパンケーキって楽しい”と、世界中の人が感じてくれるように。
ふわふわの甘さと、ピュアな想いを添えて。